犯罪被害者を取り巻く厳しい環境


日本の刑事司法制度において、犯罪被害者は長い間いわば「蚊帳の外」状態でした。しかしながら、最近の法律の制定や法改正等で、犯罪被害者にも一定の地位、権利が認められつつあります。また、被害の回復を願う方々は多くいますが、賠償の問題もそう簡単にはいかないのが現状です。ただでさえ、精神的肉体的にも疲弊しているにもかかわらず、警察の事情聴取や、現場の立ち会い、その他さまざまな負担もあるのに、賠償が受けられていない方も存在します。

更には、被害者として、犯人の処罰を求めたいのに、警察が動いてくれないといったことも実際には存在します。


告訴・告発・被害届


告訴とは、被害者(その他の告訴権を有する者)が、警察等(捜査機関。以下同じ。)に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思の表示をさします。「親告罪」といって、この告訴がされていることが裁判を始めることの条件となっている類型の犯罪もあります(たとえば刑法177条)。

告発とは、告訴権者以外の者が、警察等に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思の表示をさします。

被害届とは、単に犯罪事実を警察等に申告することを指します。告訴・告発との大きな違いは「犯人の処罰を求める意思の表示」がないことです。

これらはいずれも、警察等が捜査を開始するきっかけ(「捜査の端緒」といいます。)としての機能を有していますが、内容や実務上の処理が異なるものです。

実務上、一般に、警察等は、告訴や告発を「受理」しようとしません。「告訴をしに来た。」とアポなしでお巡りさんのところに行っても、ほとんど相手にされない、または門前払いとなる可能性が否定できません。

 

他方で、警察等に、一定の目的をもって虚偽の告訴・告発、申告をした場合には、虚偽告訴等罪(刑法第172条)という犯罪が成立します。したがって、これらの行為をしようとする場合にも、専門的見地から、十分に吟味をしてから行わなければなりません。

加害者に対する損害賠償請求

 加害者に対して、刑罰という制裁の他に、金銭的な補償を受けたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。

警察は、加害者に対してお金の問題の話をしてくれません。

そこで、お金の問題に関しては、自分で損害賠償請求をしなければならないのです。

 

理論的には、刑事手続と民事手続きは別個の問題ですが、実際問題としては密接であると思われますし、被害者の意向は、この点にもあると思われます。


修復的司法の考え方


当事務所は、 修復的司法という考え方を参考にしています(ご興味のある方はインターネットなどでも簡単に調べることができます)。

被害者、加害者いずれについても、適切に弁護士が関与することが必要であると考えています。

したがって、被害者側、加害者(犯人)側、いずれの弁護活動も受任いたしますが、それは矛盾するものではありません。