相続放棄に関するQ&A

 

Q    相続放棄とはなんですか。

A    相続放棄とは、簡単にいえば、お亡くなりになられた方(被相続人といいます。)のマイナスの財産のみならず、プラスの財産も引継がないようにすることです。

       なお、その他には、お亡くなりになられた方のプラス財産もマイナス財産もすべて受け継ぐ「単純承認」や、プラスの財産の限度で、お亡くなりになられた方の借金などの負担を受け継ぐ「限定承認」もあります。

 

 

Q    どんなときに相続放棄を考えればいいのでしょうか。

A    よく用いられる場合は、プラスの財産よりもマイナスの財産が大きい場合でしょう。

 

 

Q    相続放棄はどのようにすればいいのでしょうか。

A    相続の放棄をしようとする者は、その旨を被相続人の最後の住所を受け持つ家庭裁判所に申述しなければならない(民法第938条)という規定がありますから、家庭裁判所に「申述」をしなければなりません。

       具体的には、家庭裁判所に相続放棄申述申立書を提出しなければなりません。

 

 

Q    私は東京都に在住しています。父が群馬に住んでいましたが、1か月前に群馬で他界しました。相続放棄をしようと思いますが、私の家の近くに東京家庭裁判所があるので、そこで相続放棄の手続きをすればいいのでしょうか。

A    いいえ。

     相続放棄の申述申立は、「被相続人の最後の住所地の家庭裁判所」にしなければなりません。

 

 

Q    私は、諸事情あって、長い間、父親と連絡をとっていませんでした。ところが、突然、貸金業者から手紙が来て、父の借金を相続人の私に払えということです。相続放棄を「被相続人の最後の住所地」がわからないですが、どうしたらよいのでしょうか。

A    戸籍の附票等から最後の住所地を調査します。

 

 

Q    家庭裁判所に対する相続放棄の申述手続についての裁判所のホームページをみると、戸籍等の謄本(戸籍等の全部事項証明書)等の添付書類が必要であると書いてありますが、自分で集めなければいけないのですか。

A    はい。原則として申し立てる人が集めないといけません。

     戸籍が転々としていた方などについての相続放棄をしようとした場合、かなりの手間になる場合があります。

 

 

Q    相続放棄の申述はいつでもできるものなのでしょうか。

A    いいえ。自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと法律には規定があります(民法第915条1項)。この3カ月間を「熟慮期間」といいます。

     しかしながら、3カ月間では相続放棄をするかどうかについて判断資料が足りないことがあります。このような場合、家庭裁判所は、申立てにより、この3か月の熟慮期間を伸長することができます。

 

 

Q    父が亡くなったことを知ったのは、もう2年前ですが、今になって借金があることが発覚しました。もう相続放棄はできないのでしょうか。

A    事案によると言わざるを得ません。

        前記のとおり、相続放棄の申述は、3か月の熟慮期間内になさなければならないのが原則です。この場合、「知ったとき」がもう2年前ということなので、熟慮期間が経過してしまっているように客観的には思われます。

     この点に関し、最高裁判所昭和59年4月27日判決は、要するに、相続放棄をしなかった理由が、相続財産が全くないと信じたためであり、かつ、このように信じるにつき相当な理由があるときは、熟慮期間が相続財産の存在を認識できるときまで起算されないとしており、本件の事案にもこの判例の法理が妥当するかが問題となります。

 

 

Q    相続放棄の申述を申立てると、具体的にどのような手続が行われますか。

A    裁判所から「照会書」等の書面が送られてきます。また「審問」という手続が行われる場合があります。審問が行われるかどうかは、照会書に対する回答書の内容を裁判所が見たりしてから判断します。

     審問は、申立人が裁判所に出頭して行われるのが原則です。

 

 

Q10 相続放棄の申述を申立て、受理してもらえれば、被相続人の債権者から裁判をされることはないのですか。

A10 いいえ。相続放棄の申述受理の効果は絶対的なものではありません。したがって、債権者は、相続放棄の効果を争い(相続放棄が有効なもので、相続人と思われる人が借金などを法律上、本当に引継がないかどうかを争うということです。)、別途、訴訟を提起することができます。

     もっとも、多くの場合、相続放棄の申述を申し立てて、その受理証明書を取得し、かかる書面を債権者に提示すると、債権者は相続放棄を争いません。

 

Q11 被相続人には、配偶者である妻、長男、次男がいます。私は、被相続人のきょうだいです。被相続人が死亡して多額の借金があると、お葬式の時に聞きました。妻、長男、次男は相続放棄をすると言っています。私も同時に相続放棄の申述を申し立てられるでしょうか。

A11 いいえ。相続人には法定の順位があります。このケースだと、先順位の妻、長男、長女が相続放棄の申述を申立て、受理後にあなたが相続放棄の申述を申立てることになります。

 

 

Q12 被相続人の配偶者や子どもらが相続放棄をしたのかどうか分かりません。私は被相続人のきょうだいなのですが、相続放棄の申述の申立をいつしたらよいでしょうか。借金を引継ぐのが大変不安なので、早くやりたいのです。

A12 調査の後に行うことになるでしょう。具体的には、裁判所に「相続放棄の申述の有無についての照会」を申立てることになります。管轄の裁判所に注意が必要となります。

 

 

Q13 私は被相続人の配偶者妻で、生前同居していた者です。

     相続人全員が相続放棄をしました。しかしながら、被相続人名義の財産が残っています。具体的には、すこし残高のある預貯金、被相続人名義の自動車等です。特に自動車は私の家にそのまま置いてあり、カギも私が管理しています。これらはどうしたらよいのですか。

A13 相続財産管理人の選任申立を検討せざるを得ません。

 

     相続財産管理人は、相続人が不存在のときに、相続財産を文字通り管理する者です。実際の保管や、目には見えない権利義務関係の処理を行います。